2013年5月3日金曜日

4章


卒業論文は58ページだった。最後のページを打ち出してファイルに綴じた。喜代田さんは実験と卒業論文のまとめにずっと付き合ってくれた。卒業パーティー以来、喜代田さんは西村の話題を出さなかった。ただ、その日、智穂が帰宅するときに研究室の玄関で、
「行ってらっしゃい、応援しています」
と送り出してくれたときの表情は、全てを知っていて受け止めてくれているようだった。きっと喜代田さんとなら親友になれる、と思った。

智穂は、8月1日の早朝便で羽田に着いた。帰りの予定が決まらないので、片道便にして、鎌倉に立ち寄り、それからは新幹線で京都に向かうことにした。「一日だけは自分のために使う」と智穂は自分で決めていた。


http://horeame.blogspot.jp/2013/05/5_5352.html
に続く

0 件のコメント:

コメントを投稿