ホレアメ
2013年5月3日金曜日
まえがき
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趣味で小説のようなものを書いています。 その二作目です。 大学に勤めているので、たくさん若い人たちとお話しをします。その人達が大学で生活した息遣いみたいなものを残したくて、この作品を作りました。 大学とお店は実在ですが、登場人物には特定のモデルはいません。 書き手とし...
1章
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獣医学部の卒業記念パーティーは新さっぽろのホテルで催される。 「まだ鏡を見てるよ」萩尾智穂は心の中で舌打ちした。 卒業記念パーティーでは女子トイレの鏡がもっとも華やかな顔を見ることになる。自信に満ちた女子学生が大学最後の思い出を作る顔を念入りにチェックする。智穂は、自分...
2章
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気がつくと、横に喜代田さんが立っていた。智穂は、他人にも自分にも優しい目線を向けられるこの後輩が羨ましかった。優しい気持ちをしっかりと持っている女性は、自分がカップルになった時に相手を幸せにできる自信を持っているに違いない。誰にでも特別な笑顔を見せられたが、交際している彼氏には...
3章
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智穂が、西村とメールアドレスを交換していなかったことに気がついたのは、研究室で西村を見送った後だった。住所は、何かの資料を送るときのためにもらっていたので、手紙を出した。それから、毎日返事を待つようになった。4月の2週目には返事が来た時に便箋を傷つけないように開封する方法を考え...
4章
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卒業論文は58ページだった。最後のページを打ち出してファイルに綴じた。喜代田さんは実験と卒業論文のまとめにずっと付き合ってくれた。卒業パーティー以来、喜代田さんは西村の話題を出さなかった。ただ、その日、智穂が帰宅するときに研究室の玄関で、 「行ってらっしゃい、応援しています」...
5章
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8時に新千歳空港を出て、藤沢に着いた時には、11時半を過ぎていた。何度か鎌倉を調べたときに、江ノ島電鉄が出てきた。智穂はこの電車で鎌倉に向かうことにしていた。手紙にあった由比ヶ浜も通る。西村は、その日の午後有給休暇を取って智穂を案内してくれることになっていた。 市電のような...
6章
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京都駅には、父が迎えに来ていた。何時会っても魅力的だった。何故この父が母を愛したのか、まったくわからなかった。母は、少なくとも智穂が見ているときには、父に笑顔を見せなかった。京都駅の近くに駐車してあった車で実家に向かった。すでに薬局は閉店していたが、店長の佐々木さんはまだ品物の...
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